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読むもの、あります。

読んだ本を主にご紹介します。気が向いたら、他にも何かしらご紹介します。

『羊と鋼の森』読了。久々に、平和な小説を読めました。

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こんにちは。

 

久しぶりに書評!

最近Androidスマホのことしか書いてなかった気がするので、このブログのタイトルを変えた方がいいのか(『Android、あります。』とかな)、けっこう真面目に考えた……

 

 

さて、今回は、2016年本屋大賞を獲った『羊と鋼の森』の感想を書きますね。

 

 

羊と鋼の森

羊と鋼の森

 

 

 

大まかなあらすじ。

これ、一言で言えますよ。

「調律師を目指し、実際に調律師となって働き始めた男性の成長を描く物語」

 

本当に、この一言。

 

もちろん、様々なエピソードが盛り込まれていて、それをひとつずつ描写する(すくい取る)ことで主人公・外村の調律師としての成長を描いています。

 

この本を読んで思ったことを箇条書きで書いていくと、

  1. 章を分けてほしい。それがないので時系列の変化(何年経ったかとか)が唐突で分かりにくい。もしくは連作短編集にしても良かったのでは?エピソードがとっちらかっているように感じられた。
  2. ピアノという楽器を森にたとえ、そのぬくもりと楽器としての美しさを見事に描写している。ピアノに限らず、楽器を演奏した経験のある方ならばこの小説を読んで、楽器がますます愛おしくなるのでは。
  3. その描写とは逆に、作中の重要人物のピアノ演奏が、どれほど素晴らしいのか、文章を読んでもあまり伝わってこない。これこそがこの小説におけるキモのひとつなので、もう少し核心を突いてほしかった。

という感じでしょうか。

 

もう少し突っ込んでいきます。

 

細かな感想。

1.章を分けてほしい。エピソードがとっちらかっている。

この小説は、細かなエピソードを少しずつ描いていくことで、主人公・外村の調律師としての成長を描いているのですが、そのエピソードが「同じ年にあったことか」「次の年に移っているのか」ということがぱっと見分かりにくい。

細かに区切り(空白)を入れているのですが、これが細かすぎて逆効果になっているように感じられました。つまり、ひとつひとつのエピソードが基本的に短い。

なので、ある程度の事件はもちろん起こるのですが、非常に淡々とお話は進んでいきます。良くも悪くも。

 

いくつかの章に分けるか、もしくは連作短編集にしても良かったのではないかなあと感じつつ読み進めていました。章で分けることで、エピソードがよりくっきりと鮮やかに映えるのではないかと思うのです。

章立てされていない長編小説というのも最近は逆に珍しいかも?どうでしょう。

 

2.ピアノの描写は圧巻。これは読むべし。

ピアノという楽器を愛する人間にとって、この本は至福の一冊です。断言します。

ピアノを森にたとえ、ピアノの中には羊と鋼がいるんだ……という結末に至るまで、作中のピアノの描写は、温かく味わい深く、私たちにぬくもりや安らぎを与えてくれます。

私、ここまでピアノを愛おしそうに描く作品って初めて読んだ気がする。

 

この本を読むと、家に眠っているアップライトピアノを弾いてあげなくちゃ……!!という気持ちにさせられます。

いえね、うちにも一台、昔弾いていたけれど今は弾いていないピアノがあるもので……申し訳ないと思いつつ、1年に一度調律を頼むだけで……ああ、本当に申し訳ない。

今はヴィオラを弾いているからなあ……

 

ピアノのみならず、楽器に愛情を感じる人間であれば、この小説には共感できるはず。

それほど、この本は楽器に対する愛情の発露が素晴らしい。

登場する調律師たちが、様々な立場ながらもピアノを愛しているんだということが伝わってきますし。ピアノにとりつかれた魅力的な調律師は、外村だけじゃないですよ。

 

3.和音(かずね)さんの音色ってどんな感じなの?

これ……これが、どーーーうにも!うまく伝わってこず、大変歯がゆい思いをしました。

外村青年が初めて聴いたときから魅了されたという和音さんのピアノの音色。

この小説の中で、その素晴らしさは何度も描かれ、そしてさらに音色が成長していく描写もあるのですが、私の中の「スピーカー」もしくは「アンプ」は残念ながら、その音をうまくキャッチすることができなかった。

 

ちなみに私が楽器と聞いて思い出す小説は、秋月こおさんの「フジミシリーズ」と総称されるBL小説なのですが(過去は腐女子だった)、どちらが演奏描写がリアルかというと、フジミの最初の方、だと思います。

もう少し正確に書くと、どちらの音を聴いてみたい?と聞かれたら、「フジミの最初の方」と答える。

 

我思う、『羊と鋼の森』著者の宮下奈都さんは真面目に「音」に取り組みすぎて描写が硬いのではないか。

なんというか、もう少し「筆が滑っても」良いと思うのですよ。

 

そしてこれは1.にも関わってくるのだけれど、もう少し推敲を重ね、なおかつ逆に文章を踊らせた方が良かったのではなかろうか。

もちろん、推敲はしっかり、それこそ気が遠くなるほどされたことと思います。でも、やはり各エピソードにまとまりが若干欠ける。そして硬い。

これが宮下奈都さんの書き方なのだろうなあとも思うのですけれど。

 

ちょっと寄り道。

帯の話其の一。

ここからは、本筋を離れた話をします。

 

本屋大賞を獲る前、朝日新聞日経新聞の日曜版の書評欄にこの本が載ったことがありまして、それを読んで気になったので付箋を貼っていた私。

そしてそのままほぼ忘れ去っていたのですが、本屋大賞を獲ったとのことで大変びっくりし、「よし、買って読むぞ!」と息巻いていたところ、うちの父が「買ってきたぞー」とお持ち帰りしたのでそれを読んだという……何か悔しい……

 

ちなみに一番上の写真は、父が買って帰ってきた現物なのですが、

帯が、本屋大賞を獲る前のものだ……!!!レア!!!

 

わたくし実は大の本の帯好き人間で(マニアと言ってもいいかもしれない)、たとえば小説がドラマ化映画化などされて帯が替わるたびに、

「なんでまたこんなしょうもない帯を……」

と嘆くタイプ(あの、俳優さんの写真がどんと載り放映日時が書かれた帯ほどつまらないものはないと思う)。

 

私が買おうかなと思っていた書店は、某大手さんで、帯が本屋大賞受賞後のものだったんですよね。

なので、父が買ってきたこの本の帯は、今となっては貴重品だと思う。

いつかぶんどってやろうか……ふふふ……

 

帯の話其の二。

以下の写真をご覧ください。

これは、この本の裏表紙なのですが、帯にご注目。

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本仮屋ユイカさんのご意見にはうなずいた。

 

ただ、市川真人さんのご意見には「……そうか?」と突っ込まざるを得ない。

 

少なくともこの本の文章力は、村上春樹さんからはほど遠いですよ、言っちゃあなんですが。

そして小川洋子さんの方がストーリーがもっとドラマチック。

 

村上春樹さんの文章力に舌を巻きたければ、『職業としての小説家」を読むと良い。

小説より読みやすく、正直言って小説より文章力が際立っているから。

 

職業としての小説家 (Switch library)

職業としての小説家 (Switch library)

 

 

私がこの本を読み終えて、ツイッターに投稿したツイートを引用しましょう。

 

 

 

 

そう、私はハルキストではないし村上主義者でもない。彼の本はそこそこ好きですが、全てが好きというわけでもなく。

 

ただ、もう一つ、村上春樹さんが小説家としてすごいところをあげましょう。ごく個人的な体験ですが。

 

けっこう最近、『ノルウェイの森』を読んでいたんですよ。なぜか読みたくなって。

 

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

 

 

でもね、上巻で、直子(ヒロインの一人)がサナトリウムみたいなところに引っ越してからのところでメンタルが最低点に落っこちて、どうしようもないほどその先が怖くなって、それ以上読むことができなくなった。

 

なぜか。

それは、直子の「人間として壊れているところ」が恐ろしいほど伝わってきて、メンタル疾患を持つ私は同調しすぎて本能的に危険を感じたのだと思う。それほど怖かった。心底恐ろしかった。

それが小説の力、だと思っています。

 

だから、私は、村上春樹さんってすごいんだな、と思います。村上主義者としての崇拝ではなくね。

 

さて、まとめよう。

いい加減、寄り道から戻ってきましょう……すみませんね、長々と。

 

この本に五つ星評価を付けるなら、私は三つ星を付けます。

「★★★☆☆」

という感じですね。

 

良い小説。

とても素敵な読書時間をくれました。きらきらとした、温かい時間でした。

でも、何か物足りない。

文章のうまさは……ぶっちゃけ、それほどでもない、と感じてしまいました。大変失礼ながら。

 

なので、星三つ。

 

でも本当に、読んでいて心が冷たくなることがほとんどない、不思議なほど温かい本です。

小説初心者の方にもおすすめします。本屋大賞の良さは、「読書初心者の方にとっても読みやすい小説を選ぶこと」だと思いますので。

 

 

 

ではでは!